夢想メモリ

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ピクミン2 運搬順序と所要時間 最少のピクミンで運ぶことについて

ピクミン2において、複数の物体を短時間で回収したい時は、 多くのピクミンで同じ物体を運ばせて1つ1つ回収するより、 最少のピクミンを割り当てて複数の物体を同時に運搬する方が早いと 一般的に考えられている筈である。 本記事ではこのことについて掘り下げてみる。

はじめに

本記事の想定する場面の例

まずは具体的な例を挙げよう。

2匹のチャッピー(重さ10、運搬には最大で20匹のピクミンが参加できる)をポッド/オニヨンから等距離で倒したので、 死骸をなるべく早く回収したい。 隊列には20匹の赤花ピクミンが居るとする。 この時、ピクミン20匹で1つずつ運ぶのと、 ピクミン10匹ずつで2つ同時に運ぶのでは、どちらの方が早いだろうか? ここでは簡単の為、ピクミンを物体の運搬に割り当てる時間も、 20匹で運んだ場合に再び戻って来るまでにかかる時間も考えないものとする。

運搬速度について

ピクミン2の物体の運搬速度はmuratsubo氏によって解明されている。ニコニコ動画のシリーズへのリンクは下記。

https://www.nicovideo.jp/series/73984

定義の正確性を無視して書いてしまうと、 ピクミン2の物体の運搬速度は、 たんけんねぶくろで寝たリーダーを運ぶ速度(ピクミンの数や種類によらず不変)を1000として、 以下のように表される。

(P-m+1)/M * 180 + 220

  • m:重さ
  • M:物体の運搬に加えられるピクミンの最大数
  • P:運搬能
    • 物体を運ぶピクミン1匹毎にその種類に応じて下表の値を加えた総和
成長度\色 赤黄青コッパ
1 3 0.6
1.5 3.5 1.1
2 4 1.6

最初の例の速度を実際に計算してみる

では、運搬速度の式を用いて最初の例を実際に計算してみよう。 チャッピーはm=10、M=20であるから、運搬速度は(P-9)*9 + 220となる。 ここで運搬に参加する赤花ピクミンの数をx(10≦x≦20)とおき、 運搬速度vをxの関数と捉えると、

v(x) = (2x - 9) * 9 + 220である。

v(10) = (20 - 9) * 9 + 220 = 319

v(20) = (40 - 9) * 9 + 220 = 499

となるので、10匹で2つ同時に運ぶ場合の所要時間を1/319とすると、 20匹で1つずつ運ぶ場合の所要時間は2/499であり、 10匹で2つ同時に運んだ方が早いことが分かる。

本題1

ここまでは状況を想像してもらう為の具体例の提示に過ぎず、 限定的な条件下で所要時間を最短にする方法が分かっても利益は少ない。

しかし、実は運搬速度の式だけを用いて、 「同じ物体は同時に運んだ方が早い」ことを導くことができる。

同じ物体は同時に運んだ方が早い

運搬速度を決める要因の内、プレイヤーが操作できるのは運搬能P(運搬に投入するピクミン)だけであるから、 mとMを定数と見なして、式を整理してみる。

v(P) = (P-m+1)/M * 180 + 220
= 180/M*P + 180/M * (1-m) + 220

ここで、a = 180/M、b = 180/M *(1-m) + 220とおくと、v(P) = aP +bと表せる。

ここで、最少のピクミンで物体を運搬する時、P=c(cは定数)であるとする。 運搬速度はv(c) = ac + bとなる。 この時、運搬に加わるピクミンの数をt倍(tは1より大きい実数)とすると、P = tcとなり、 運搬速度はv(tc) = atc + bとなる。

ここでv(tc) / v(c) = t - (t-1)b/(ac + b)であるが、 t-1>0の為、v(tc)/v(c) < tが成立する。

これが何を表しているかと言うと、 運搬に加えるピクミンをt倍にしても、 速度はどんなに大きくなってもt倍には届かないという事である。 しかし、運ぶ回数がt倍になるなら、速度がt倍以上になり、 1回あたりの所要時間が1/t倍以下にならなければ、総所要時間の短縮は見込めない。

したがって、同じ物体が複数ある時、できるだけ多くを同時に運んだ方が早いのである。 これはmやMの値に無関係の為、全ての物体に対して言える。

最初に示した具体例では同じ物体2つの場合を考えたが、 ここで示したことは同じ物体が3つ以上の時にも適用できる。 思考結晶IKARI(重さ1、最大8匹で運べる)が8つあり、隊列に8匹のピクミンが居るなら、

  • 2匹で4つずつ2回に分けて運んだり(t=2)
  • 4匹で2つずつ4回に分けて運んだり(t=4)
  • 8匹で1つずつ8回に分けて運んだり(t=8)

するより1匹ずつで8つ全て運ぶ方が早いのである。

また、tは整数に限定していないので、 60匹の赤花ピクミンを使って60匹のチャッピーを運ぶ場合(そんな状況は無いが)、

  • 20匹で3つずつ20回に分けて運んだり(t=2)
  • 15匹で4つずつ15回に分けて運んだり(t=1.5)
  • 12匹で5つずつ12回に分けて運んだり(t=1.2)

するより10匹で6つずつ10回に分けて運ぶ方が早いのである。

ここでは同種の(1匹あたりの運搬能が等しい)ピクミンだけが隊列に居る場合だけを考えて来たが、 各物体を運ぶピクミンの運搬能の和が等しくなるように配分すれば、 異種のピクミンが混ざっている場合にも適用できる筈である。

本題2

ここまでで、同じ物体が複数ある時、同時に運んだ方が早いことは一般性を持って示すことができた。 しかし、私はこれだけに留まらず、あらゆる種類の物体があらゆる数あるとしても、同じ物体に多くのピクミンを割り当てるより、 同時に運んだ方が早いのではないかとこれまでの経験から考えている。 そのことについて考える為、まずは異なる2つの物体を同時に運んだ方が早いのかを考えることにする。

異なる2つの物体は同時に運んだ方が早いのか?

ここでも、ピクミンを物体の運搬に割り当てる時間と、 複数回に分けて運ぶ場合に再び戻って来るまでにかかる時間も考えないものとする。

また、2つの物体を同時に運ぶ場合、回収が完了するまでにかかる時間は、 後で回収される物体が回収される時間によって決まるが、 先に回収を終えた物体を運搬していたピクミンを、後で回収される物体に加えること(加勢)は考えないものとする。

基本的にこの仮定は、同時に回収する方が不利になるので、 この仮定で別々に回収する方が遅いことを示せれば、 同時に回収する方が早いと考えて良いと思う。

赤黄青の葉ピクミンにおける証明

運搬速度はv = (P-m+1)/M * 180 + 220である。

ここで青黄赤ピクミン及びコッパチャッピーの葉ピクミンでは、m≦P≦Mである。

運搬速度はP = mのとき最小でv = 180/M + 220 > 220

運搬速度はP = Mのとき最大でv = 400 - (m-1)/M < 400

ここで、物体を運搬する距離をdとする。 運搬速度の最小値が220より大きい為、2つの物体を同時に運んだ場合にかかる時間はd/220より小さい。 一方で、運搬速度の最大値は400より小さい為、2つの物体を別々に運んだ場合にかかる時間は、2d/400 = d/200より大きい。 したがって、同時に運んだ方が早い。

ピクミンにおける反例

運搬速度はv = (P-m+1)/M * 180 + 220である。

隊列に6匹の白ピクミンが居るとして、思考結晶IKARI(m=1,M=8)とシャコモドキ(m=5,M=8)を距離1000だけ運ぶとする。

同時に運ぶ場合、思考結晶IKARIは1匹で運ぶので、運搬速度は310。 シャコモドキは5匹で運ぶので、運搬速度は580。 したがって所要時間は、1000/310≒3.23

別々に運ぶ場合、思考結晶IKARIは6匹で運ぶので、運搬速度は760。 シャコモドキは6匹で運ぶので、運搬速度は670。 したがって所要時間は、1000/760 + 1000/670 ≒ 2.81

よって別々に運んだ方が早くなってしまう。

今後のアプローチ等

今回行った計算等はここまでなので、考察と今後やってみようと思うアプローチについて述べる。

今回の仮定では、赤黄青の葉ピクミンでは、異なる2つの物体は必ず同時に運んだ方が早いことが示されたが、 白ピクミンにおいて、異なる2つの物体は別々に運んだ方が早いこともあると示された。

しかし、この仮定自体、加勢や移動時間を考慮していない為、 同時に運ぶ方が不利になりやすい。 よって、この反例だけを以て、異なる2つの物体は同時に運んだ方が早いとは限らないとは言えない。

これを明らかにするには、加勢等を考慮した、より実際のゲームに近いモデルで考えることが求められる。 しかし、そうすると速度の比較だけで考えることが難しく、 特殊例だけでなく一般の場合に時間を計算すると、 運搬速度の式が分母に来る為、かなり扱いが面倒になる。

そこで、ピクミン2に存在する物体のmとMの一覧を用い、 今回の過程で別々に運んだ方が早くなる組み合わせだけ、 例外的に加勢を考慮して実際に計算することを考えている。

今回の過程で同時に運ぶと遅いという結果が出やすいのは、 片方のmとMに大きな差があり、もう一方はmとMの差が小さく、Pが大きい時の筈である。 思い当たる例を考えてみた限りでは、物体の片方が思考結晶で、運搬を行うのが白ピクミンである場合しか、 同時に運ぶ方が遅いという結果にはならなかった。 恐らくこのような結果が得られる組み合わせは少ないと予想している。

また、mとMの一覧が手元に無いので、確かなことは言えないが、 mとMが現実的に取りそうな値の範囲から、 赤黄青ピクミン及びコッパチャッピーでは、 花ピクミンでも(今回の仮定で)同時に運ぶ方が遅いという結果になる組み合わせは無いと予想している。